BCP(事業継続計画)とは何か、災害対策・防災計画を分かりやすく解説

      2019/07/22


企業や自治体が定めておくべき「BCP(事業継続計画)対策」について、この記事では解説します。最初は「BCP(事業継続計画)対策」の概要についての説明です。

BCP対策とは

BCPとは、災害・事故・テロなどの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業継続や早期復旧を図るための計画のこと。「Business Continuity Plan」の頭文字を取ったもので、日本語に訳すと「事業継続計画」となります。

簡単に言うと、「何か緊急事態が発生したときに、重要な事業がストップしないように、あるいはストップしたとしても被害が最小限に済むように、取り決めておく計画」のことです。

緊急事態としては自然災害や大事故、テロ攻撃などの事業の継続に影響を与える可能性のあるものが挙げられます。

事業のストップは、企業としての信頼を失うことに繋がりかねません。また、緊急事態への対策が十分にできていないことで、社員や顧客の生命にリスクを生み出すことにもなります。

現在、BCP対策を直接義務付ける法律や条例はありません。しかし、企業の信頼や従業員や顧客の生命を守るためにも、BCPをしっかりと行い、対策することは企業にとって必要不可欠な取り組みであると言えます。

BCP対策はなぜ必要か

①いつ、何が起きるかは誰にもわからない

災害などのリスクは突然発生します。リスク発生時は想定外なことや二次被害が起きる可能性が大きく、混乱も生じやすいです。何かが起こってから、対策を考えるのでは到底間に合いません。

事前に自然災害や大火災、テロ攻撃などの緊急事態が起こったときにどうするのかを決めておくことで、リスク発生直後から迅速に動きだすことができます。そういったスピード感のある対応が、事業の早期再開へと繋がります。

いつ、何が起きるかは誰にもわかりません。そのため、BCP対策は事業の大小を問わず、必須であると言えます。

②事前に決定しておくことで冷静な対応ができる

災害や大事故などの発生直後は、状況の把握が難しいため混乱が生まれます。避難方法、避難ルート、避難場所があらかじめBCPで決まっていないと顧客や従業員の命を危険にさらすことになります。

混乱した状況下だと、人は普段できていることでもできなくなるものです。平常時に対応できていることであってもルール化し、従業員に浸透させる仕組みをつくることで、非常時に冷静に対応することができます。

③供給連鎖を止めない企業努力が求められている

他の産業と全く関連がない産業は存在しません。どんな産業も、別の産業から影響を受け、また別の産業に影響を与えます。

例えば、ある1つ食材の物流が止まってしまうことで、日本全国に普及する製品やサービスの供給停止に繋がる可能性があります。そのため、供給連鎖を止めない企業努力が社会から求められています。

1つの会社の事業停止が、場合によっては社会全体の不利益につながってしまうこともあります。そのため、供給連鎖を止めない努力が企業には求められているのです。

④取引先や顧客などステークホルダーの信頼を得る

入念に対策を取り、BCPを策定していることを公にする事で顧客、取引先、株主などのステークホルダーの安心感を得る事ができます。企業として社会からの安心と信頼を得ることは事業を継続していく上で特に重要です。

BCP対策の具体例


さて、BCPが必須であることが分かったところで、この章ではBCPの具体例をいくつか紹介します。

①老舗百貨店「藤崎」(仙台市、小売業、社員730人)

2011年3月11日、東日本をマグニチュード9.0の非常に大規模な地震が襲いました。仙台市に店を構える老舗百貨店「藤崎」も例外ではなく、地震の被害を受けました。

しかし、この百貨店では買い物客3500人と従業員1000人を1人も負傷させず、また、翌日から路上での販売を再開。そして、2日後からは突貫工事を行い、約1か月後には営業を全面再開しました。

毎年2回行われていた防火・防災訓練が、「藤崎」の迅速で適切な対応を可能にしたと言われています。訓練では、実際の災害状況下で起こりうる想定シナリオを用いていたそうです。

このような事前の準備・対策が事業を継続するためには重要です。

②新産住拓(熊本市、工務店、社員126人)

熊本市のある工務店・新産住拓は平成11年の大型台風の被害の教訓から、災害対応マニュアルを作成していました。そして、一度作成して終わりではなく、台風被害が出るたびに新たな反省点を見つけ、マニュアルの改訂を行ってきました。

そのようにして培われていた災害への対応力が想定外だった熊本地震への対応にも活きました。前震の翌朝から、対応を始め、約3000軒の修理と安全点検を行ったり、職人の確保や物資が不足する事を見越して早期にグループ会社と連携するなど、先手を打つ対応を取り続けました。

③株式会社生出(東京都瑞穂町、製造業、社員58人)

東京都瑞穂町に拠点を置く包装資材や緩衝材の製造を行う株式会社生出は、2009年の新型インフルエンザのパンデミックに端を発し、BCPを策定しました。人工透析駅を製造しているお得意先の製薬会社から、事業継続体制を組み立てることを要請され、BCPを本格的に作成したそうです。

BCPポケットマニュアルや大地震初期対応カードを全従業員に配布するなど、BCPを社員全員へ浸透させるための工夫がなされています。また、訓練の度に明らかになった改善…や課題点を壁に張り出すなどしていて、BCPのアップデートにも余念がありません。

そういった点が評価されたのか株式会社生出は、中小企業ながら「BCMS(事業継続マネジメントシステム)」の国際企画の認証を取得しています。

④インターユニット株式会社(神奈川県秦野市、製造業、社員25人)

半導体や電力変換装置の製造・販売を行っているインターユニット株式会社は、主に地震災害を想定したBCP対策に取り組んでいます。BCP策定に際し、過去の売り上げ実績や公共性の高低から優先する事業を決定したそうです。

被害低減のために転落防止対策や悲惨防止対策を行った他、防災マニュアルや事業継続計画書を作成し、事業の中断を長引かせないための対策を行いました。そのうえ、名刺サイズの「大震災対応マニュアル」を全従業員に配布させ、BCPの浸透も目指しています。

⑤株式会社ブラッドエンタープライズ(東京都渋谷区、サービス業、社員5人)

DVDプレスやアセンブリ事業、倉庫補完業務などを行っている株式会社ブラッドエンタープライズは、工場の停止やインターネット通信回線が断絶した場合を想定したBCP策定を行っています。

バックアップシステムの構築や、被災時用備品の準備、運用訓練などを予防低減策、事前準備として設定しています。年に1回、内容の見直しや備品の点検などを行い、BCPを必要に応じてアップデートしていくそうです。

⑥ルネサスエレクトロニクス社(東京都江東区、半導体大手、社員19000人)

各種半導体に関する研究や会派悦、製造、販売などを行っている大手企業のルネサンスエレクトロニクスは東日本大震災での事業停止の反省を踏まえ、2011年の8月にBCPの強化案を発表しました。このときの見直しが奏功し、2016年の熊本地震では震災発生から約1ヶ月後と、早い段階で事業を再開することができました。

東日本大震災後、ルネサスエレクトロニクスの主力工場である那珂工場(茨城県ひたちなか市)は2ヶ月ほど運転を停止し、自動車向け部品の供給が止まったことで世界規模で支障が出たことと比較すると、1ヶ月での復旧は素早い対応だと言えます。

事業継続のために、国内工場の耐震性能をあげ、生産拠点の分散や外部工場の代替生産体制を構築し、顧客に応じた在庫管理体制を作るなどの施策を行ったそうです。

⑦小熊建設株式会社(東京都世田谷区、建設業、社員13人)

リフォーム工事や耐震補強工事、バリアフリー工事などを主に請け負っている建設会社の小熊建設株式会社は2016年の熊本地震をきっかけにBCP対策の見直しを行いました。それまでの災害対策は「モノ」についてのものに限られていましたが、見直しを機に、情報や人にも焦点をあてるようになりました。

情報のバックアップや、非常時用の発電機の整備、代替拠点の設置などをBCP対策としてはじめ、そのうえでBCP浸透のための訓練を年2回行っているそうです。

⑧沢根スプリング株式会社(静岡県浜松市、製造業、社員53人)

ばねや医療用コイルなどの製造販売を行う沢根スプリング株式会社は、海沿いに会社を構えていることもありもともと防災訓練などの実施していたが、2011年の東日本大震災をきっかけにBCP対策の重要性を再認識しました。

社屋や機械装置の災害対策を強化し、県外5社と災害時の相互応援協定を結びました。また、社員とその家族の安否確認のためのシステムを新たに導入し、そのうえでポケットマニュアルを全社員、全家族に配布しました。BCPの浸透についても、BCP委員会を2ヶ月に1回開くことで可能にしているそうです。

2018年に台風24号の影響で約48時間の停電の影響を受けた際も、自家発電でパソコン等への給電を行うことで、必要最低限の業務を続けることができました。

以上の例からわかるのは、平時から緊急時に備え準備し、それを従業員へと浸透させておくことが大事だということです。

BCP対策を行う企業のためのチェックリスト

(中小企業庁が作成したアンケートのスクリーンショット)

現在、事業の大小を問わず、様々な企業がBCP対策に取り組んでいます。そういった企業を対象に中小企業庁が作成した「BCP策定・運用状況の自己判断」というチェックリストがありますので、紹介します。

66個の質問に、「はい」か「いいえ」で回答するチェックリストです。「はい」が○○個あったから合格、「いいえ」が○○個あったから不合格、というものではありません。「はい」がつけられなかった項目を把握し、「何がいま足りていないのか」に気付くためのチェックリストです。

チェック項目ごとに、「必須」もしくは「推奨」と優先度がつけられています。自社に必要な重要度の高い項目を確認する事ができます。また、中小企業だけでなく自治体もこのチェックリストを活用して、準備を行なっています。

  • 事業継続基本方針の立案
    事業継続基本方針の有無、基本方針の周知する仕組みの有無、基本方針の公開の有無
  • BCPサイクルの運用体制格率
    BCPサイクルの運用を推進する社内体制が確立されているかどうか、BCPサイクルの運用体制を評価する機能があるかどうか など
  • 事業を理解する
    災害時の事業への影響の評価、中核事業が受ける被害の評価、財務状況の診断
  • BCPの準備、事前対策を検討する
    事業継続のための代替案の決定、事前対策の検討・実施
  • BCPを策定する
    BCPの発動基準の明確化、発動時の体制の明確化、事業継続に関連する情報の整理と文書化
  • BCP文化を定着させる
    BCP教育の実施、BCP訓練の実施、BCP文化の醸成
  • BCPの診断、維持・更新を行う
    BCPの診断、BCPの維持・更新
「BCP策定・運用状況の自己診断(中小企業庁)」
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/level_a/bcpgl_03a_6.html

BCP導入のための最重要項目・「危機管理(非常時)対応マニュアル」の作成

BCP対策の中で、最も重要なことは「危機管理(非常時)対応マニュアル」の作成です。マニュアルでは、非常時対応を「初期対応フェーズ」、「業務仮再開フェーズ」、「本格復旧フェーズ」の3つに分けることが基本的です。

初期対応フェーズには、周囲の安全確保、従業員の安否確認と緊急連絡及び危機管理対策本部の設置、二次被害の防止、業務を継続する環境の確保などが含まれます。

初期対応が終わり、落ち着いた次の段階ではいかにして業務を再開するかが重要になってきます。緊急事態発生後から24時間~2,3週間あたりが業務仮再開フェーズとして想定されます。

業務仮再開フェーズでは、優先的に再開する業務や店舗・工場。現場の選定、当該業務の仮再開などがあたります。ここのフェーズで本格的な復旧に向けての準備を進めておくことが重要です。

次は、本格復旧フェーズです。時期としては緊急事態発生後から、2~3週間後が想定されます。このフェーズでは、事態の収束と、平常業務への本格復旧が行われます。

なお、このフェーズは初動対応フェーズや業務仮再開フェーズのように早急に対策をとらなければいけないものではありませんので、詳細なマニュアルを作成する必要はありません。

災害対策としてのBCP


BCP対策の中で比較的ポピュラーなものとして「災害対策」があります。ここでは、BCP対策の1つである「災害対策」について説明します。

災害発生時、企業には従業員や顧客の生命を守ることや、被害や二次災害を拡大させない努力、被災状態からの復旧サポートなどが企業の役割として求められます。

BCP対策は法的に義務付けられているわけではない一方で、社会からは対策の策定や迅速な対応を強く求められるため企業側と社会との間にギャップが生まれやすい部分です。

事例を挙げると、平成30年に起こった西日本豪雨の際に工場が浸水し、水蒸気爆発した事故があり、周辺の住宅と車庫や車に甚大な被害が出ました。企業側は従業員の人命救助を優先し爆発前に従業員は全員退避していたものの、周囲への影響を考慮せず事前に対策を取っていなかった事が問題になりました。

このように、災害による自社の影響が外部に大きく及ぶ可能性があるため、考慮の範囲を社外にも広げた対策を取らなければなりません。

例えば、店舗や工場にいる全ての人の避難誘導をするためには、事前に以下のような準備が必要となります。

  • 避難場所の確保
  • 避難ルートの設定
  • 従業員に対して防災グッズ(ヘルメットなど)の配布
  • 災害の種類ごとの行動計画表の作成
  • 定期的な避難訓練の実施
  • 災害時における社内報告ルート策定と社外(警察・消防)へのスムーズな通報ルートの決定
  • 近隣の企業や住民との交流と連携
  • 危険物を取り扱っている場合は緊急的なシステム停止の方法

災害や事故が起きてからでは間に合わない準備を、事前に策定し訓練を行う事で通常業務の一部として組み込んでおくことがBCP対策の第一歩です。

災害が起きてから焦らないように、危機管理(非常時)対応マニュアルを作っておくことが重要です。

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参考文献・サイト

「BCP策定の意義・必要性(経済産業省北海道経済産業局 中小企業課)」
https://www.hkd.meti.go.jp/hokic/20170906/data01.pdf (2017年8月30日作成)
「BCP等の取り組み事例(中小企業庁)」
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/2018/180420BCPshiryo2.pdf (2018年3月作成)
「企業の事業継続への取組事例−地震を経験した企業の事例(内閣府)」
http://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/pdf/02torikumijirei.pdf (2017年3月30日作成)

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