企業が防災を効果的に行う方法と防災にSNSが有効な理由

      2020/01/21


さまざまなリスクから企業を守るために適切な防災対策を導入することが必要不可欠ですが、どのような防災対策を行うべきなのか悩んでいる防災担当の方も少なからずいるでしょう。

今回はそんな方のために防災の基礎知識と具体的な防災対策、災害時の情報収集・発信の手段としてSNSが有効な理由などを解説していきます。

この記事を読むことで適切な防災対策に取り組めるようになるので、ぜひ読み進めてください。

防災とは


防災を簡単に説明すると、主に台風や地震などの災害による被害から建物や従業員・顧客などを守る取り組みのことです。

災害対策基本法」第2条第2項では防災を以下のように定義しています。

防災災害を未然に防止し、災害が発生した場合における被害の拡大を防ぎ、および災害の復旧を図ることをいう。

防災の対象となる災害の範囲は自然災害のみならず、テロ・事故などの人為災害や特殊災害も含まれています。

また企業が防災に取り組む必要があるのは、決して道義的な理由だけではありません。

従業員などの安全確保は災害発生後の事業継続・復旧に欠かせないほか、企業には正規・非正規問わず事業所で働く従業員を守る「安全配慮義務」という法的責任が課せられているのです。

この安全配慮義務を怠ったことが原因で従業員に被害を与えてしまった場合、安全配慮義務違反によって法的責任を問われ、損害賠償を従業員に支払わなけれなりません。

これは災害時においても例外ではなく、予見できる災害に関しては防災によりできうる限りの安全を確保することが求められています。

具体的には賃貸マンションの倒壊により死傷者を出したため、建物所有者に安全配慮義務違反およびに賠償責任が認められた事例があります。

1995年に発生した阪神・淡路大震災により神戸市東灘区にあるマンションの1階が倒壊し、7名の住人が死傷しました。

周囲の建物よりも被害が深刻であったことからマンションの構造自体に不備があったとして被害者の遺族など原告らが建物所有者に損害賠償を要求。

調査の結果、マンションの設計や耐震性に問題があった上、施工に関してもコンクリートブロック壁が柱や梁に十分に溶接されていなかったことが判明。

裁判所は予見不可能な被害ではなく、安全配慮義務を怠っていたとして建物所有者に対して合計で1億2,900万円の支払いを命じました。

想定されるリスクの種類


災害には自然災害だけではなく事故などさまざまな種類が含まれていますが、災害を大きく分類すると自然災害・人為災害・特殊災害(CBRNE災害)の3つになります。

それぞれの特徴は、以下のとおりです。

【自然災害】
自然現象によって起こる災害で、台風や地震、洪水、土砂崩れ、豪雨などがある
【人為災害】
①都市災害
火災、大気汚染、水質汚濁など
②労働災害(産業災害)
労働に起因して従業員が負傷したり、疫病にかかったりする災害③交通災害
交通事故や飛行機・船舶事故など
④管理災害
操作ミスや管理の不備・怠慢など
⑤環境災害
水質汚染など環境破壊によって発生する災害
【特殊災害(CBRNE災害)】
①Chemical(化学)
有害物質や化学兵器による災害
②Biological(生物)
病原体や感染症のパンデミック
③Radiological(放射性物質)
放射能兵器によるテロや原子力発電所の事故
④Nuclear(核)
核兵器を使ったテロ
⑤Explosive(爆発)
テロや事故による爆発

人為災害に分類される労働災害は一般的に省略して「労災」と呼ばれており、パワハラや長時間労働など劣悪な労働環境を起因とするメンタルヘルスなども含まれています。

また企業で特殊災害は起こりえないと考える方もいらっしゃるでしょうが、Chemicalに分類される一酸化炭素中毒や異臭事件、Biologicalに分けられるインフルエンザの感染などは日本でも頻繁に起きています。

想定される災害は企業によって異なるので、どのような災害が発生し得るのかをよく考えておきましょう。

災害による被害を最小限に抑る5つの方法


災害に対してどのような防災を行なっておくべきなのでしょうか。この章では代表的な防災の一例を説明していくので、ぜひ参考にしてください。

防災マニュアルを策定する

防災に取り組む上で最優先されるのが防災マニュアルの作成です。

防災マニュアルで災害発生時の行動方針や役割分担などをあらかじめ定めた上で従業員に浸透させておけば、混乱が生じやすい災害後も冷静に対処できるようになるでしょう。

また防災マニュアルを一度、策定したらそれで終わりにするのではなく、防災訓練や教育を行う中で繰り返し改善していくことが重要となります。

というのも定めた対応が適切ではなかったために防災マニュアルが十分に機能しない場合も起こり得るからです。

そのため、定期的に内容の見直しを行い、より完成度の高い防災マニュアルを目指しましょう。

社内に安全対策を行う

災害による被害を最小限に抑えるため、事業所内に可能な限りの安全対策を行なっておきましょう。具体的には、以下のような対策があげられます。

【棚・キャビネット】
棚やキャビネットを壁になるべく近づけて転倒防止ストッパーなどで固定する。また重量のある物を下に置くことで重心を下げ、転倒しづらくさせる
【パソコンやコピー機などのOA機器】
地震などにより、故障や落下で従業員が負傷する恐れがあるため、バンドなどで固定する
【窓ガラスなど】
飛散防止シートを貼って、ガラス片が散らばるのを防ぐ

また消火栓や非常警報などの防災設備は消防法や建築基準法などにより、点検が義務付けられているため、必ず確認しておきましょう。

防災グッズを備蓄する

一般的に水道・ガス・電気の復旧や支援物資の到着までに3日程度、事業所内が安全であれば救助隊の到着までは最長で3日間はそこに留まる必要があると言われています。

万が一、広範囲の災害が発生した場合も想定して最低3日〜1週間分の防災グッズを備蓄しておくと良いでしょう。

また東日本大震災を機に内閣府が発表した「東京都帰宅困難者対策条例」の条例第17号では、以下のように企業に対して防災グッズなどの確保を求めています。

事業者に従業者の一斉帰宅の抑制と従業者の三日分の食糧等の備蓄についての努力義務を課します。

この条例の対象となるのは正規・非正規問わず同じ事業所内で働く全従業員であり、全従業員分の非常食などの防災グッズを用意しておくのが理想的です。

条例にある努力義務とは「〜するよう努めなければならない」という意味合いであり、この条例に違反したからと言って企業が罰則を受けることはありません。

しかし備蓄のコストが惜しいからと一切、準備しないのは従業員の安全確保や安全配慮義務の観点から考えると推奨できません。

そのため、できうる限りの防災グッズを事業所内に準備しておきましょう。

ハザードマップを確認する

災害発生時に迅速で安全な避難を実現するために、あらかじめハザードマップを確認して避難場所を決めておきましょう。

ハザードマップとは自然災害による被害とその範囲を予測し、安全な避難経路・避難場所を記載した地図のことです。

地震や洪水、土砂崩れなど災害に応じたハザードマップが作成されているため、災害発生時でも安全な避難を行えます。

また災害発生時は何が起こるのか分からず、想定していた被害よりも大きくなる場合も珍しくありません。

建物の倒壊など被害状況によっては道が塞がってしまう恐れもあるため、2つ以上の避難経路・避難場所を決めておくと良いでしょう。

防災訓練を定期的に行う

日頃から防災に取り組んでいても、災害発生時にどのように対応するべきなのかを従業員が把握していなければ冷静に対応できません。

そのため、定期的な防災訓練が必要不可欠です。効果的な防災訓練を行うためには、リアリティな防災訓練シナリオを作成しましょう。

防災訓練シナリオでは、「災害発生時の対応を学ばせる」など目的を明確にした上で、地震や火災など様々な災害を想定したシナリオを作成します。

中には同じシナリオを使い回している企業も見受けられますが、これでは防災訓練の実施自体が目的となってしまい、訓練で想定していなかった被害が発生した際に対応できません。

これを防ぐために地震から火災に変更するなど防災訓練を実施する度に異なる状況のシナリオを用意すると良いでしょう。

また近年では想定外の被害にも対応できるように参加者にシナリオを非公開にしたまま防災訓練を実施する企業もあります。

被災の状況確認にSNSが活躍する理由


近年では災害が発生した際にSNS上で情報発信・収集をする動きが広まっています。

これは決して個人間だけで行われていることではなく、自治体やテレビ局などもSNSを活用しているのです。

なぜ災害発生時の情報発信・収集の1つの手段としてSNSが注目されているのでしょうか。

災害発生時にSNSで情報発信・収集を行うメリットとしては、即時に情報発信・収集ができる、災害に比較的強いという2つがあげられます。

まずリアルタイムで情報発信・収集ができるという点ですが、テレビやラジオなど既存のメディアの場合、取材・編集を終えてから放送するという流れになるため、情報を提供するまでに時間がかかってしまいます。

しかしSNSの場合は、取材・編集をせずに今起きた出来事をリアルタイムで投稿することができるのです。

また、SNSは情報を目にしたユーザーに拡散されやすいという特徴を持っており、孤立した被災者が自らスマートフォンで情報発信を行うことで救助や支援に繋がる傾向があります。

例えば、2011年に東日本大震災が発生した際に児童福祉施設で救助を求めるツイートが当時の東京都副知事である猪瀬直樹氏の目に止まり、ヘリを出動させた事例があります。

次にSNSが災害に強いという点ですが、SNSはインターネットが繋がれば使えるという利点があります。

インターネットはパケット通信が使われており、データを分割して1つの回線を複数人が利用します。

そのため、災害発生時に回線が混雑していても問題なく使える場合が多いです。

電話の場合は、災害発生後は回線が輻輳に陥ることで通信規制が実施されるため、多くの方が一時的に利用できなくなります。

2018年に発生した大阪府北部地震では、回線の輻輳で12,800件の電話が一時的に繋がらない状態に陥ったため、被災者はLINEによる安否確認を行なっていたようです。

SNSの課題点と情報発信・収集に役立つSNS緊急情報サービス


これまで説明したとおり様々なメリットのあるSNSですが、その一方で悪質なデマや誤った情報も発信されやすいという大きな問題を抱えています。

たとえ善意の行いであったとしても真偽を確認しないまま拡散してしまうと、誤った情報であった場合、混乱を招いてしまうのです。

実際に起きたデマには、2018年に発生した北海道胆振東部地震の事例があります。

地震発生後、消防隊や自衛隊を語る以下の不安を煽るデマが主にLINE上で拡散されました。

(苫小牧市で)地響きが鳴ってるそうなので、大きい地震が来る可能性が高いようです。推定時刻5〜6時間後とのことです!!

実際に地震は発生しませんでしたが、苫小牧市危機管理室にはパニックに陥った市民から電話が殺到し、多くの方が避難所に集まる事態に。

デマ情報を把握した苫小牧市市役所は、市の公式HPとFacebookで「これらは全て根拠のないものですので、冷静な行動をお願いいたします。」と呼びかけました。

さらに同地震では、以下の投稿がTwitter上で拡散され、この情報を立憲民主党の旭川事務所のTwitterアカウントが引用。

石狩川浄水場の自家発電が故障してて、このまま午後まで停電するなら、石狩川水系の家は断水になるかもしれません。

しかし後に根拠のないデマだったことが発覚し、該当する投稿を削除し謝罪する事態になりました。

SNSでは正しい情報とそうではない情報が入り乱れるため、本当に正しい情報なのかを見極めた上で情報発信・収集を行うことが必要不可欠です。

しかしSNSでは様々な情報が投稿されるため、全て人力でどの情報が正しいのか判断することは大変、困難となり、リサーチ専門の人員を用意したとしても情報発信までに時間がかかってしまいます。

そんな場合に役立つのがFASTALERTなどのSNS緊急情報サービスです。

このサービスはSNSに投稿された情報を人工知能が自動的にリアルタイムで収集・解析し、適切な情報のみを届けてくれます。

さらにSNSの情報を分析する人員を雇うよりも、比較的にコストがかかりません。

SNS緊急情報サービスは、近年ではその情報の正確さと即時性の高さから大手報道機関や企業で普及が進んでいます。

防災に取り組む上で正確な情報取集は必要不可欠となるので、SNS緊急情報サービスの導入を検討してみましょう。

まとめ

今回は企業の防災の基本と具体的な防災対策の方法、災害時にSNSが役立つ理由などを紹介しました。本記事の重要なポイントには、以下の3点があげられます。

  • 防災対策を怠ったことが原因で従業員に被害を与えた場合、安全配慮義務違反に問われる
  • 最低3日〜1週間分の防災グッズを備蓄しておく
  • SNS緊急情報サービスを使えば、効果的にSNSで情報収集・発信を行える

この記事を参考にして効果的な防災対策を導入しましょう。

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